014 発見! 第二階層のボス部屋
地下のサバンナを歩いていると、わたしたちが出会ったのは深海魚ではなく、見覚えのある人たちだった。
「第一階層突破おめでとー。人数絞った方が楽だったでしょ?」
「増やすと逆にキツくなるとは思わんかったぞ」
「それマジな。助かったわ。で、ここの探索しててどうよ?」
「奥側の敵は手強いね。正直、厳しいから戻って来たところ」
「じゃあ、アレはまだ潜ってないのか?」
男が指したのは側面の崖だった。よく見ると、そこに横穴が開いている。おおう、側面探索してなかったよ!
「全然気づかなかったよ。モンスターのことしか考えてなかったなあ」
「じゃあ、俺たちが先に行って良いか?」
「良いですよ。どうぞどうぞ」
そんなこと、わたしたちに断る必要もないだろうに。あれを先に見つけたのは彼らなのだから、遠慮なく先に行けば良いのだ。自ら罠センサーになってくれるというのだ。わたしが反対する理由などまったくない。
五人組の男たちが横穴に入っていってから一分ほどあけてわたしたちも入ってみる。中の様子も分からなければ対策も何もない
「あ、そうだ」
思いついて、インベントリから斧を取り出すと、壁をゴンゴンと叩きながら進んでいく。
「何やってるの?」
「隠し扉とかないかなって思って」
「ユズって、第一階層でもこうしてたの?」
「いや、全然だよ。今思いついた」
この嫌らしさ満点のゲームなら、これくらいしないと隠し部屋とか絶対見つからないと思う。見破るスキルとかあるのかも知れないけど、いまはそんなものを持っていない。
左右の壁をゴンゴン叩きながら十分ほども進んでいくと、先を進んでいたはずの人たちの悲鳴が聞こえてきた。
「何だろう?」
「敵かな?」
「罠かも?」
その場で斧を構えて警戒してみるが、誰も戻ってくる気配はないし、敵が上ってくる様子もない。
「どうしよう? 進む? 戻る?」
わたしの質問に、二人とも「うーん」と考え込む。何度か悲鳴が聞こえてきた以外には何も起きない。
五人組の男たちが横穴に入っていってから一分ほどあけてわたしたちも入ってみる。中の様子も分からなければ対策も何もない
「あ、そうだ」
思いついて、インベントリから斧を取り出すと、壁をゴンゴンと叩きながら進んでいく。
「何やってるの?」
「隠し扉とかないかなって思って」
「ユズって、第一階層でもこうしてたの?」
「いや、全然だよ。今思いついた」
この嫌らしさ満点のゲームなら、これくらいしないと隠し部屋とか絶対見つからないと思う。見破るスキルとかあるのかも知れないけど、いまはそんなものを持っていない。
左右の壁をゴンゴン叩きながら十分ほども進んでいくと、先を進んでいたはずの人たちの悲鳴が聞こえてきた。
「何だろう?」
「敵かな?」
「罠かも?」
その場で斧を構えて警戒してみるが、誰も戻ってくる気配はないし、敵が上ってくる様子もない。
「どうしよう? 進む? 戻る?」
わたしの質問に、二人とも「うーん」と考え込む。何度か悲鳴が聞こえてきた以外には何も起きない。
「行ってみようか」
危険なのは確かだが、怖いからと進むのを諦めていては何もできない。わたしの言葉に二人も頷き、今まで以上に慎重に壁や床を叩きながら進んでいく。一歩下りるたびに斧でそこらじゅうを叩いていく。
ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ゴン。
ゴン?
「音が!」
「今、ここだけ違ったよ?」
「本当に何かあるの?」
壁を叩いていくと、人が通れそうな大きさで、音の違う部分があるのが分かった。
「どうやったら開くんだろう」
「どこかにスイッチない?」
三人で手分けして、周辺に怪しいものがないか調べまくる。
「これ、そうかな?」
「どれどれ?」
セコイアの指差す先には丸いボタンのようなものがあった。岩の凸凹の中に紛れていて、一見してそれがボタンだとは分からない。
「押してみる?」
「押してみよう。ハズレだったらやり直すだけだし。あ、装備してない斧はインベントリに仕舞ってね。たぶん、死んだら落としてなくなっちゃう」
準備も整い、ボタンをポチッと押してみると、重い音を立てて岩が動いていく。ポッカリと開いた穴を進んで、角を右に折れると行き止まりだった。しかも、ご丁寧に『ハズレ』と書かれているし。
「運営ェェェ……」
「ちょ、これは……」
「性格悪すぎキーーーーック!」
わたしの怒りのキックが炸裂すると、『ハズレ』のHPがゼロになり消えていった……
「ちょっと待て、これ敵だったの?」
「何? ヌリカベ的な?」
「よく見たらHPバーあったのね」
運営の性格の悪さに愕然としつつ、その先に進む。『ハズレ』の先には普通に通路があったのだ。
「でもこれ、本当にハズレなのかな?」
「そうやって疑心暗鬼にさせる罠でしょ!」
「私は疑うべきだと思う。誰が隠し扉は一つなんて言ったの?」
怒りに任せて進んでいたが、キキョウの言葉に一気に血の気が引いた。
「戻って調べ直しましょう」
塗り壁のところから左右の壁を叩きながら進み、隠し扉を発見したのだった。
「本当にあるとはね」
「もう、罠かもとか疑う気もしないよね」
ガンガンと壁を叩きながら通路を進んでいくと、ひらけた場所に出た。そして、その奥には見覚えがある巨大な扉。
「ここはボスの間?」
「これは鬼だね」
「見つけといて何だけどさ、これって、普通、見つけられるものなの?」
「どっかに見破るスキルあるんじゃないかなあ?」
「で、ボス行ってみる?」
わたしは止めておきたい。この階層でのレベル限界はまだだろうし、初見の相手に勝つためには伊藤さんがいてほしい。
「この酷さなら、ここは伊藤さんが来るまでに見つからないと思うの。十九時くらいにはインしてくると思うけど」
「十九時か、早めに晩ご飯食べて戻ってこれば大丈夫だね」
「じゃあ十七時くらいまで、家の取り方とか探してみようか?」
ということで、『帰還の水晶』で町に戻ると、まず市役所に行ってみる。
「住民課はどこですかー?」
「住民課は二階にございます」
冗談で言ってみたつもりだったんだけど、案内されてしまった。
「家を買いたいんですけど、どこで売ってますか?」
「現在販売中の家の一覧です」
パネルがポンっと出てきた。スワイプしてみると、結構いっぱい出てくる。
「私にも一覧見せてください」
「僕も!」
わたしの肩越しに覗いていた二人だったが、欲しいタイプの家は違うようで、自分でリストをめくりだした。
「お? クランホーム用なんてあるんだね。工房は複数置けるけどお店スペースは無いんだ」
「お店付きの工房だと、工房は一つだけだね」
「倉庫機能ってのもよく分かんないし、今後のアップデートでどれだけ家の種類って増えるのかなあ?」
「でも、それまで工房持たないでいたら、スキルレベルも上がらないんじゃない?」
「ああああ、悩む!」
「よし、武器の売り先探してこよう」
「あ、本気で家買うつもりになってる人がいる」
「今買えるか分かんないし、幾らくらいになるか確認したって良いじゃない」
意気込むわたしにセコイアは水を差してくるが、キキョウも家を買う気満々だ。クランホームは十五万から、店付き工房は八万から、店だけ、工房だけだともうちょっと安いみたいだ。
目標金額も分かったし、道行く人に武器屋や鍛冶屋、雑貨屋などの場所を聞いて、それぞれで斧やダガーの売値を確認する。
「斧が一本三十? かなり安くね?」
「売値が百五十だよ。すごいボッタクリ」
「じゃあ、広場で売ってみよう」
ということで、広場に向かい「斧屋〜、斧屋だよ! 安いよ、安いよ、斧の大安売り!」と大声で歌っていると、結構人が集まってくる。
「いくら?」
「今なら一本百Gだよ」
「百? 高くない?」
「え? 店で買ったら百五十だよ?」
「品質は?」
「普通」
「それならガチャで出てるからなあ……」
マジか。ってことは基本、売れないってことか。
仕方がないので、武器は全部店売りにすることにした。斧と小剣とダガーを十本ずつ、そして古びたダガーは九十三本だ。
全部売り払って一千三百九十一Gだ。
「ぬぐうう、全然足らぬではないか」
「頑張って稼がないとね」
家は買いたいのだ。最低で十五万を貯めねばならないのに、一人あたり四、五百では先が思いやられる。